読書レビュ―【2021年度上半期】②

前回の続きです。


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『正欲』朝井リョウ




自分が書きたかったもの、先回りして書かれました、感。


全部言葉にされた、悔しい。


たぶん該当する人にとっては、一番初めの、佐々木佳道の手紙だけでうわっとなるのでは、と思う。自分の特性が単に理解されることを諦めてきた人々が、マジョリティに対して持つ冷ややかな視線。「いや、君たち、なんだかんだ理解されたくて言ってるだけだよね」みたいな、最終的には理解できるものとしてマイノリティを持ち出しているのが滑稽で、哀れだと、そんなことを思う人の視点に触れることは実生活ではほとんどの人がないでしょう。


登場人物の中で一番にその存在が大きいのは桐生夏月だったと思う。彼女の心内描写が一番刺さった。佳道とともに、かつての同級生が飛び降りた崖下を見て、私たちはこんなところから飛び降りられる人間ではないと自覚するシーンが恐ろしかった。


もう一つ印象的なのはもちろん、神戸八重子と諸橋大也のシーン。正直、八重子みたいな女性が現実にいると渋いなーと思わせられた。その前の大学の文化祭でつながりが大事、なんて嬉々として語っているのを見せられているのも少しきつかったくらいだし(ただ作品の流れでは絶対に欠かせない、必要悪な存在ではあった)、それが諸橋に干渉し始めて、悩みがあるなら私に相談してみたいな態度で来られるとさらにきつい。いや、こっちが望んでるの、放っておかれることやからってなる。


でも、最後の八重子と諸橋の会話の中で八重子の発した言葉の中にも、かなり重要なメッセージが含まれていたのは間違いない。それは、選択肢がある者の辛さ。選択肢がなかった者には分からず、選択肢がある者もそれを叫ぶわけでもない、そんな心情を最後にしっかりと八重子が叫んでくれたのは良かったと思う。マイノリティは大事にしないと駄目だ、みたいなクサい結論に貶めないところが朝井リョウさんのさすがと言ったところで、それはしっかり、諸橋を八重子が見送ったすぐ後に、諸橋が捕まるという結論に終わるのが皮肉で仕方なかったと思う。

『凪に溺れる』青羽悠



総合人間学部の後輩らしいです。高校生の時に小説すばる新人賞を受賞している。化け物か。


登場人物の誰もが、何かを諦めた大人って感じで、頭からつま先までどこも共感できず、感情移入が不可能だった。普段の生活でいろんなことを諦めている方は感情移入できるかもしれない。皮肉じゃないです。

『人生の法則』岡田斗司夫



岡田斗司夫という人、現代ではあまり馴染みがないかもしれませんが、オタキングという会社の社長、アニメを筆頭とした芸術に狂ってきた人です。


当初の冒頭に簡単な心理テストがあって、それをもとに四分類されたどのグループかに所属されます。これが、しっかりと系統だった心理考察になっていて、それを啓発のような形ではなく小説のような形で説いてくれるので、すんなりと頭に入ってくる。


そして一番のこの本の魅力は、間違いなく巻末の考察でしょう。ではなぜこのように四タイプの人間が派生するようになったのかという話。生物学的にも一番の思春期の時期に交尾を封じられた人類がなぜ滅びなかったのか、それが、食物連鎖において人間より一歩上に存在する「思想」というカテゴリーが容赦なく人を殺すようになり、心理テストで分けられた四タイプの型は、その繁栄の方法について幼少期の頃から無意識にインプットされてきた方法が定着した、というもの。初めて読んだときは、頭良すぎかよと思って感動しました。


ちなみに、この記事が書けたのはこの本のおかげです。

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さらにちなみに、ですが、この岡田斗司夫という人のお悩み相談室がYouTubeの一部でも公開されているのですが、面白いです。仕事に疲れ自殺したいと言っている相談者に対して、「そうやって不幸を自慢することがあなたにとってのオナニーになっていて、あなたはそのオナニーが気持ちいいもんだからやめられなくなっちゃってる、あはは」とか言い出すぶっ飛んだ人だが、よく聞くと言っていることは理路整然とした内容なので学ぶことが多い。

『助けて、が言えない』松本俊彦



SOSサインを出さない、精神的な病気やいじめ被害者等の心理を考察した学術した本。あまり好きになれなかった。


冒頭で、SOSが出せないことは本人の力不足ではなく……というようなことがまず書かれるわけですが、だったらタイトルは『助けてが言えない』ではなく『助けてを言うのは難しい』でしょう、と思った。


障害等を抱える人たちの特質を明らかにしたいというのは立派だが、しかし我々は潜在的に、本当に無意識的に彼らのことを「我々にできることができない人」というような視線が常日頃貼り付いていて、一番苦しいのはきっとそこではないかと感じるから、その本のタイトルが本人の能力に帰結する表現であるのが悲しかった。できないことでも、それはただの特質なので堂々としていればよいというのは正論だが、それは堂々とできる特質しか持ってこなかった者の意見であって、そう考え始めるとまさに朝井リョウの『正欲』に怒られているような気分にすらなる。

『小説家になって億を稼ごう』松岡圭祐



読むのは何年も先になるな、と思った。何か恥ずかしいので、今は何も書かないでおきたい。


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半年弱でこれだけしか読んでいないというのは、読書量があまりに少ない。月に二冊くらいのペースになってる。小学校の頃は一年で百冊くらい読んでいたはずなのだが………。