小説・作品鑑賞

『パラサイト』と嗅覚から始まるゾーニングについて

AmazonPrimeで『パラサイト』が見れるようになっていた。 www.parasite-mv.jp かなり面白かった。社会風刺みたいな映画と思って見たのだけれど、もちろんその要素がありながらコメディみたいでもあった。そりゃあ現実世界であんなことが起きれば悲劇だし、で…

『明け方の若者たち』から見る、社会の中間集団の解体について

優れた作品にまた出会ってしまったらしい。 akegata-movie.com 若者の「マジックアワー」として、カツセマサヒコさんが書き下ろした小説の実写化で、原作は読んでいないのだけれど、AmazonPrimeで配信されていたのをきっかけに見た。これってあれじゃん、と…

『さよなら絵梨』から見るドラマツルギーについて

すごい漫画を紹介してもらったので紹介する。 shonenjumpplus.com ジャンプラから出ている『さよなら絵梨』というマンガ。主人公の優太が撮る動画のコマを基本に進む構成だが、何と言ってもこの作品の特徴は、読者視点の設定を常に揺さぶってくるという点に…

『左ききのエレン』―才能を持たなかった全ての人たちへ―

マンガからこんなに高揚感を味わったのは久しぶりだ。タイトルは『左ききのエレン』。才能を持たぬ凡人である朝倉光一と、才能しかない自分に絶望しているエレン、その二者視点で描かれるクリエーター群像劇である。 左ききのエレン 1 (ジャンプコミックスDI…

読書レビュ―【2021年度下半期】

読書するとき、心に残ったものは一冊ごとにレビューを書くようにしたので、こんな本を読んだと全体的に総括するのは半年に一回くらいのペースがちょうど良いと感じるようになりました。この半年で読んだ本をパーッと振り返っておきます。 『そしてバトンは渡…

彩瀬まる『不在』が、本当に「不在」の物語だった

久しぶりに、読書でふるえた。 不在 (角川文庫)作者:彩瀬 まるKADOKAWAAmazon 彩瀬まるさんは、2010年に「女による女のためのR18文学賞」という賞の受賞でデビューされ、2017年には『くちなし』という作品が直木賞候補にものノミネートされている作家さんだ…

『『だから僕は"人生"をやめた』』【後編】

www.mattsun.work 前編で話したのは、我々は恋愛ではなく失恋なのだということだった。 それを、ヨルシカの曲に重ね合わせ、そこにひとりの人生を投影してみたいと思った。 『だから僕は音楽をやめた』の歌詞に見てみる www.youtube.com 歌詞を全文載せてお…

『『だから僕は"人生"をやめた』』【前編】

『だから僕は音楽をやめた』というのは、ヨルシカという音楽グループの曲だ。もう3年前の曲だが、ひょんなことから知ることになり、初めて聞いたとき、ああこれは、本質の曲だ、そう感じてしまった。 www.youtube.com だから僕は音楽をやめた。それは、ただ…

想像もできない価値観の転換に【『殺人出産』を読んで】

えぐい本を読んでしまった。 殺人出産 (講談社文庫)作者:村田沙耶香講談社Amazon 村田沙耶香の独特の世界観が繰り広げられすぎて、思春期に読んだら多分病んでた。 一編目では、十人産めば一人殺せるという制度のある世界で、十人目の出産を終えた姉を妹が見…

健やかな論理と、痛みの掃き出し【『どうしても生きてる』を読んで】

「やっぱな、自殺じゃないんだよこんなの。わかってたことじゃん」 第一話の『健やかな論理』にて1ページ目に登場したこの台詞を見て、その題の「健やか」という形容詞の意味するところが脳の奥にまで染みわたったような感覚を憶えられただけで幸せだった。…

文学の"高尚性"に関する議論

しばしば文学は、その高尚性を議論されることがある。高尚性というのは言い換えれば、敷居の高さのようなものだ。芸術作品の中でも、例えば音楽なんかに比べると、文学の方がとっつきにくいような印象を持つ人が多いと思う。 要因は様々だろう。簡単に思いつ…

目には目を、殺人には殺人を。加藤智大『解』を読む

人を殺すことを認めないこの国で唯一認められている殺人は、死刑制度である。法の下に裁かれた場合のみ、他者の命を奪うことが正当化される。 死刑制度に関する賛否は両論ある。死刑制度に賛成するときには、死刑を課せられるほどの重罪を犯した者の命を保証…

嘘で気化する誰かのバトン【『そして、バトンは渡された』を読んで】

注 当記事は、小説『そして、バトンは渡された』のネタバレを含みます。引用を各所から行うだけなのでストーリーの概要には触れませんが、今後作品を楽しむ予定がありましたら、自己責任で読んでください。 ****************** 早瀬君がそ…

読書レビュ―【2021年度上半期】②

前回の続きです。 www.mattsun.work ******************* 『正欲』朝井リョウ 正欲作者:朝井リョウ新潮社Amazon 自分が書きたかったもの、先回りして書かれました、感。 全部言葉にされた、悔しい。 たぶん該当する人にとっては、一番初…

読書レビュー【2021年度上半期】①

一か月もブログを書かなかったのは、今年になって初めてです。なんとPV数はみるみる減り、お小遣い程度に稼げていた広告収入も半分ほどになりました。 書くことがなくなってきた、というより、あまりに日常生活で刺激をもらうことが減ってきている気がして、…

本を読むことに意義はあるのか

なぜか小学校の頃の記憶で鮮明に残っているものがある。クラスの三十人ほどで、討論を行う授業だった。 題は「本とテレビはどちらがいいか」だった。 どちらの立場で討論に参加するかは各自で決めていいとの事だったので、僕は迷わずに本側に着いた。そうし…

【まとめ】2月に読んだ本

今月は思ったよりも読書がはかどらなかった。理由は1冊目の『倫理学入門』に1週間もかけてしまったこと、など。 『倫理学入門』品川哲彦 『 名も無き世界のエンドロール』行成薫 『完全自殺マニュアル』鶴見済 『ファーストラヴ』島本理生 『ドクターデスの…

【後編】自死の予防因子について―『生き心地の良い町』より―

昨日の記事に続き、今回は後編を書きます。先に、こちらの記事をお読みください。 www.mattsun.work 前回の前編では、自死の予防因子として重要な心理的背景に関して考察をした。今回はそれとは異なり、この本の中で述べられている、歴史的及び地理的背景に…

【前編】自死の予防因子について―『生き心地の良い町』より―

先月末に読んだ、岡檀さん著の『生き心地の良い町』が、かなり名著(このような表現だと上から目線ですが)だと感じて、刺激を受けたので、その内容を今日と明日にわたってまとめてみることとした。生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある作…

元気をもらった曲。ご紹介。

たまには息を抜いた記事を書こうと思って、ただただ、今まで元気をもらった曲を紹介しようと思う。 やはり、人の声を聞くというのはとても重要なのだと思う。 僕の場合は、マジでこの世からいなくなりたい、くらいに思ったときに聞く曲を選んでいるので、ど…

【まとめ】1月に読んだ本

一月に書く記事はこれで最後なので、読んだ本を一覧で紹介することにした。特に、今年からは読書をする量が圧倒的に増えた気がする。一月の前半は卒論でバタバタしていたのであまり時間を割かなかったが、後半から主に読書をはじめ、五冊読めたのでそこそこ…

「愚かである」ということ。―『愚行録』―

自分の愚かさに嫌になることがある。また、他人の愚かさに嫌になることもある。 前者はおそらく、どちらかと言えば内省的な人間に映り、褒められる人間の部類に入るだろう。一方後者は、自分の都合で周りを決めつけるような、自己的な人間に映ることが多いか…

『安楽死か、尊厳死か』ー要約と感想ー

新年になって、本を読むことが増えた。その中の一冊で、この本を買った。 安楽死か、尊厳死か (ディスカヴァー携書)作者:大鐘 稔彦発売日: 2018/09/26メディア: 新書 大学で自死の研究を行ってきたが、自分は安楽死に関する考察をしてきたことはほとんどなか…

”作者”が”作品”になる―『えんとつ町のプペル』を見て―

『えんとつ町のプペル』という映画を、先週に見た。 キングコングの西野亮廣さんが絵本作家として活動しているという事は映画公開よりも前から知っていて、近畿大学の卒業式のスピーチをたまたまYoutubeで見つけたことで、「ディズニーを超える」なんていう…

黒い羊

ちょうど一年前の今頃、非常に感銘を受け、心を打たれた動画がある。 www.youtube.com 大学を出た後は医学部に入ることを目指してみようと思ったころだったから、この先何が待っているのだろうとワクワクする気持ちと同時に、なにか突拍子もないことを始めて…