「モノ」と「者」から見る反出生主義のグラデーション

最近、またまたそんなことを考えている。いつまで考えるのだろうか。死ぬまでだろうか。 僕たちの中にはしばしば、子供なんか産めるものかと考える人がいる。それが少数派なのかどうかはいまいちわからない。ただその傾向が今までに比べれば強まっているのは…

読書レビュ―【2021年度下半期】

読書するとき、心に残ったものは一冊ごとにレビューを書くようにしたので、こんな本を読んだと全体的に総括するのは半年に一回くらいのペースがちょうど良いと感じるようになりました。この半年で読んだ本をパーッと振り返っておきます。 『そしてバトンは渡…

軋むベッドでずっと寝ていた非国民の話

引っ越し作業がひと段落ついた。近場での引っ越しだったのでそこまで苦労はなかったけれど、それでも自力での引っ越しは初めてだったので、至る所でてんやわんやした。この記事も、Wifiが届かないアクシデントの中、カフェに逃げ込んで書いている。3月末が…

彩瀬まる『不在』が、本当に「不在」の物語だった

久しぶりに、読書でふるえた。 不在 (角川文庫)作者:彩瀬 まるKADOKAWAAmazon 彩瀬まるさんは、2010年に「女による女のためのR18文学賞」という賞の受賞でデビューされ、2017年には『くちなし』という作品が直木賞候補にものノミネートされている作家さんだ…

『『だから僕は"人生"をやめた』』【後編】

www.mattsun.work 前編で話したのは、我々は恋愛ではなく失恋なのだということだった。 それを、ヨルシカの曲に重ね合わせ、そこにひとりの人生を投影してみたいと思った。 『だから僕は音楽をやめた』の歌詞に見てみる www.youtube.com 歌詞を全文載せてお…

『『だから僕は"人生"をやめた』』【前編】

『だから僕は音楽をやめた』というのは、ヨルシカという音楽グループの曲だ。もう3年前の曲だが、ひょんなことから知ることになり、初めて聞いたとき、ああこれは、本質の曲だ、そう感じてしまった。 www.youtube.com だから僕は音楽をやめた。それは、ただ…

想像もできない価値観の転換に【『殺人出産』を読んで】

えぐい本を読んでしまった。 殺人出産 (講談社文庫)作者:村田沙耶香講談社Amazon 村田沙耶香の独特の世界観が繰り広げられすぎて、思春期に読んだら多分病んでた。 一編目では、十人産めば一人殺せるという制度のある世界で、十人目の出産を終えた姉を妹が見…

自殺するより前に。光になるより前に。

自殺とは即ち速度なのではないか、と思うことがある。 観測史上もっとも速度を持つものは光とされている。自殺とは、光に似たようなものがある。 理系の一部の人間以外を置いて行く議論だが、相対性理論というものがある。あれは何を語っているかと言えば、…

漂白される銀色世界とコロナ、個人主義の果てに【後編】

www.mattsun.work 前編では、管理主義から個人主義への推移で自殺が減り、個人主義をさらに過激にしたのがアドラー心理学ではないかという話をした。そこにコロナが介入した結果、どうなるのか。 コロナが必要としたのはウイルス免疫ではなくヒトの加害免疫 …

漂白される銀色世界とコロナ、個人主義の果てに【前編】

自殺を考えない日はないと言っても過言ではないほどの日々を過ごしている。このブログに書く記事だって何かしら最終的には自殺と結びついているし、小説を書くときだって、自殺をテーマにしない文章を書いたことは一度もない。 さて、話は横に飛び、現在ちょ…

健やかな論理と、痛みの掃き出し【『どうしても生きてる』を読んで】

「やっぱな、自殺じゃないんだよこんなの。わかってたことじゃん」 第一話の『健やかな論理』にて1ページ目に登場したこの台詞を見て、その題の「健やか」という形容詞の意味するところが脳の奥にまで染みわたったような感覚を憶えられただけで幸せだった。…

文学の"高尚性"に関する議論

しばしば文学は、その高尚性を議論されることがある。高尚性というのは言い換えれば、敷居の高さのようなものだ。芸術作品の中でも、例えば音楽なんかに比べると、文学の方がとっつきにくいような印象を持つ人が多いと思う。 要因は様々だろう。簡単に思いつ…

目には目を、殺人には殺人を。加藤智大『解』を読む

人を殺すことを認めないこの国で唯一認められている殺人は、死刑制度である。法の下に裁かれた場合のみ、他者の命を奪うことが正当化される。 死刑制度に関する賛否は両論ある。死刑制度に賛成するときには、死刑を課せられるほどの重罪を犯した者の命を保証…

嘘で気化する誰かのバトン【『そして、バトンは渡された』を読んで】

注 当記事は、小説『そして、バトンは渡された』のネタバレを含みます。引用を各所から行うだけなのでストーリーの概要には触れませんが、今後作品を楽しむ予定がありましたら、自己責任で読んでください。 ****************** 早瀬君がそ…